注染とは

注染とは手ぬぐいの代表的な染技法です。

注染とは絵柄を切り抜いた型紙を生地に当て、防染糊を付け数十枚重ねた上から染料を注ぎ染めていく昔ながらの技法です。
明治時代に考案された技法で、それまでは長板に生地を敷き1枚ずつ染める方法が一般的で、一日に仕上がる数が限られていました。
着物のような繊細な柄が表現しづらくなたものの、注染の普及により生産性が大幅に向上し、一気に庶民の間に広まり、手ぬぐいや浴衣地などを染める技法として人気を博しました。

現在は職人の減少や更なる大量生産を目的にプリントによる方法が主流になりましたが、注染手ぬぐいのもつ柔らかさ、表裏のない仕上がり、にじみやゆらぎなどの表情の豊さは再現できません。

注染の工程

1 糊置き(板場)

渋紙で作成した型紙を木枠に固定する。
手ぬぐい一枚分を台の上に広げ、型を乗せて染めない部分にヘラで均一に防染糊を置く。
型枠を上げ、生地を折り返し同じ作業を20〜40枚分繰り返す。

※注染において一番熟練の技が要求され、この工程の出来が仕上がりに大きく影響してくる。

注染 糊置き(板場)


2 土手を作る

防染糊を筒に入れ、生クリームを絞る要領で土手を作り、色と色が混ざらないようにする。
一色の場合も柄により行い、必要の無い場所に余分な染料が流れるのを防ぐ。
「ぼかし染め」をしたい所はあえて土手を作らずにおく。

※注染は1枚の型紙で何色も一度に染めることができ、土手を作り染め分けるこの技法は「差し分け」といい、世界でも類をみない。

注染 土手を作る


3 注染(紺屋)

注ぎ口の細い薬缶(やかん)を使用し、作った土手の中に染料を注ぎ下からコンプレッサーで吸引する。
この注ぐ作業から注染(ちゅうせん)と呼ばれる。
染め終えたら、ひっくり返し裏側からも同じに染めていく。
こうして上から下まで染料が染み込み裏も表もない仕上がりになる。

※色の境界線を混ぜ合わせる「ぼかし染め」は、職人の微妙な手加減により仕上がりが異なるため、紺屋の腕の見せどころとなる。

注染(紺屋)


4 水洗(水元)

水洗機にかけ大きく振り洗いを繰り返し、たっぷりの流水で余分な染料と糊を洗い落とす。
よれている生地を一反ずつ広げながら仕上げ洗いをし、たぐり寄せまとめる。
脱水機にかけ脱水する。

※色移りさせないよう神経をつかう作業でもあり、約10メートルもある生地を絡ませないようにたぐり寄せるのもコツのいる作業である。

注染 水洗


5 乾燥

「やぐら」から垂らしたロープの輪に手ぬぐいの先端をかける。
上に登りロープをたぐり寄せ手ぬぐいを上げ、一反ずつ広げながら干して天日で乾燥させる。
乾燥後、上から一反ずつたぐりまとめ下へ下ろす。

※雨天や強風の日は部屋干しをする。
風の強い時は絡まってしまうだけでなく、濡れた生地が擦れ合い汚れてしまう危険性もある。

注染 乾燥


6 仕上げ

乾いた生地を一反ずつ反物状に巻き互い違いに重ねておく。
「地張り」といい、回転棒を差し1枚の手ぬぐい分を広げ、端で折り返し、染めた時と同じ状態に絵柄を重ねていく。
4反ずつ加圧ローラに通し、シワを伸ばす。
折り返しにハサミを入れ1枚の長さにカットし、1本の手ぬぐいとなる。

※一見簡単そうな工程だが、すべてが手作業でコツのいる作業。熟練の職人とのスピードの差は歴然。

注染 仕上げ


いくつもの工程を経て、染め上がる日本の伝統手ぬぐい。
職人の技と息づかいが感じられ、天候にも左右される表情と使い込むほど柔らかな手触りの良さにきっと満足していただけるはずです。